終電を逃した女が一緒に飲んでいた男の部屋に来ている。布団は2つあり2人は別々の布団で寝ようとしていた。部屋の電気を消し、お酒を飲みながら話していた話の続きをする。口癖が面白い上司の事や、仕事が出来ない同僚のこと。話題が尽きない午後11時50分。女は終電を逃したと嘘をついていた。
スタイルがいいだけで恋愛感情が一切ない女が自分の部屋に来てるなんて予想外のプランだった男。話好きな相手の口調に合わせるも頭の中は別のことで一杯だった。部屋のカーテンは締め切っていてスキマから僅かな光が入っていた。鼓動が止まらない午後11時58分。「部屋、寒くない?布団薄いしこっちにおいでよ。」男は暑かったが嘘をついた。
「わかった。」薄暗い部屋の中に入り込む僅かな光を頼りに相手の布団に入る女。受け入れるためにスペースを作る男。ここからこの男にどう受け入れてもらおうかを考える午前0時2分。「酔いが回ってるみたい」女は嘘をついた。
部屋の中に響く音は男女2人の僅かな呼吸音と外から聞こえる車の通る音。男は手を握りそのまま身体を引き寄せる。そっと耳元で女が囁く「好きにして」そのまま布団が宙を舞い、2人を覆うものはなくなった。唇が重なろうとした瞬間に女が聞く。「私のこと、好き?」「勿論さ、ずっと好きだったよ。」午前0時10分。男は嘘をついた。
「むかどんさん、競馬で勝ってますか?」「最近負けてるけど年間でみたら勝ってるよ。」
午前8時。男は嘘をついた。
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