干し芋ワールド

干し芋の気持ちを考えると何とも言えない気持ちになる。

最初は土の中にいてすくすく育っていたかもしれない。成長の邪魔をする石に文句を言っていたかもしれない。土の中で好きな芋の話をしたりしていたかもしれない。いよいよ大きくなってきて気になるあの子との距離も近づいてきたころに、ニンゲンがやってきて勝手に掘り起こしていく。あの子も一緒に掘り起こされるのを見ているが、なにもすることはできないだろう。抵抗する手段がない。

芋は人間界に来てから色々な食べられ方をするが、中でも干し芋は困惑するだろう。干されるのだ。今までは土の中にいたのに、そこから干されてしまうのだ。干されている間は不安だろう。今まで地下にいたはずなのに地上にいる、それに自分がバラバラになり、だんだんと商品の規格に合うように姿を変えていく。そんな干し芋はどんな気持ちなんだろうか。

 

干し芋の気持ちはわからない。しかし私は最近、ニートをしていた期間から脱出したこともあって、地下から地上に来たかのような雰囲気を味わっている。私は人間の中でも干し芋の気持ちが理解できるほうかもしれない。

地上と地下では過ごし方が全く違う。地下では自由気ままに根を張ることができるが、地上に上がってしまうとルール・規律・マナーがあってそれに従う必要がある。ボコボコだった芋が綺麗に商品用にカットされるように、人間も地上に出ると…すなわち社会に出ると、干し芋みたいに綺麗な形になるのだ、商品としての干し芋になるためには、ならざるを得ないのだ。その結果が通勤電車のスーツを着たサラリーマンや、堅苦しいビジネスマナーだ。僕らはみんな干し芋だ。泥まみれになって遊んだ幼少期の記憶なんかどこかに放り投げて、干し芋になったのだ。

 

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